じゃんくな日々

気ままに書きなぐってます。ゲームについてが多いかな。

空色の笑顔

2000年1月7日
この日は快晴だった。
石田咲良は多目的結晶にセットしていたアラームがなるより6分早く目が覚めた。
いつもより1分早い。
すぐに多目的結晶をチェックする。
しかし、就寝前にチェックした時と同じく竹内優斗の日誌は提出されていなかった。
「竹内、たるみすぎ」
朝迎えに来た時にたっぷりと説教してやる。そして、半日は口を利いてあげない。
恋人とはいえそこはきっちり分けないとね。
制服に着替えながらそんな事を考える。
着替えたあと、竹内が来るのを待っている間に弁当を作るのが日課になっていた。
説教した時、竹内どんな顔をするかなぁ。
すまなそうにしゅんとしている竹内を想像しておかしくなる。
そうだ、あいつは小犬みたいなヤツだ。呼べば「隊長ぉ〜」と嬉しそうに笑顔で走ってくる。
「たいちょぉ、僕をもらってください〜」
咲良の顔が爆発して真っ赤になる。
そうだ、あいつはいきなりそう言って告白してきたんだった。
まったく。恥ずかしい事を思い出したせいで弁当が少し不恰好になったじゃない。
ピンポーン
タイミングよくチャイムが鳴る。
しかし、玄関を開けた先にいたのは山口葉月だった。
「隊長、たまには一緒に行きませんか?」
一瞬、落胆した顔を見せる。
しょうがない、来ないあいつが悪い。今日は口を利いてやら無いと思いなおし山口と登校する。


教室に到着するが竹内の姿が見当たらない。
他の隊員に竹内の事を聞いても誰も所在を知らなかった。
不安になってくる。
竹内は病気で休んでいるだけだ。そうに違いない。
授業が終わったらお見舞いに行ってやろう。竹内喜ぶかな、それとも慌てるかな。
モヤモヤした気分を抱え、竹内がいないままホームルームの時間になり小島空が入ってくる。
浮かない顔をしているように咲良には見えた。
「残念な知らせだ。竹内君が今朝死体で発見された」
空先生、ナニヲイッテルノ?
ざわつく教室。
「幻獣共生派に酷くやられたらしい」
一見、動揺して無いように見える咲良。
しかし、思考は停止しており、上官が入ってきたことにも気づいていない。
竹内は昨日部屋まで送ってくれて笑顔で別れたはずだった。
それなのに日報は提出されていなかった。けしからん、しかし私は優しい隊長だから朝まで待ってやると就寝した。
モウ、アノトキニハ……。
「…です。石田隊長よろしくお願いします!」
名前を呼ばれハッと思考が復活。
「あ、ああ。よろしく頼む」
どうやら上官が竹内の補充員を連れてきていたようだ。
黒板に小島航と書いてあった。
航は整備班へ配属、佐藤尚也が整備班から前線へ異動となり、竹内の代わりに戦車兵になった。


放課後、小隊は佐藤や航の引継ぎなどで忙しいはずであった。
しかし、それらを部下に任せて咲良は屋上に来ていた。
村田彩華が察して引き受けてくれた。彼女は竹内が咲良に告白した時にそばにいた。
屋上から見える空は竹内が大好きな青空だった。
積もった雪の上に大の字になり青空を見つめる。
竹内、公衆の面前で告白しないでよ、バカ。
告白はもっとムードがある場所でするんじゃないの、バカ。
デートでチケットを何故私が準備しなければいけないのよ、バカ。
今日作った弁当、誰と食べれば良いのよ、バカ。
まだ、名前で呼んであげてないのよ、バカ。
いつまでも隣にいるって言ったじゃない、バカ。
バカ。バカ。バカ。……バカ。
「竹内の、……優斗のバカー!」
咲良は泣いた。思いっきり泣いた。
明日からはもう泣かないと決めて泣いた。


空に憧れ、青空の様に透き通った笑顔を見せ、そしてその笑顔に惹かれた。
その笑顔を見ることはもう、叶わない。