じゃんくな日々

気ままに書きなぐってます。ゲームについてが多いかな。

ある悪魔憑きの苦悩〜佐久間弘幸の場合〜2

どうしてこんなことになっているんだろう
佐久間弘幸は装甲がボロボロになりながらも空を駆けていた。


今日はセラフィムに所属しての初任務だった。
放課後、図書館に寄って試験勉強しようと考えていたところでの呼び出しだったので、不機嫌な気分で現場へ向かった。
場所は郊外の元デパートだった廃ビルで、到着した時にはすでに戦闘が始まっていた。
「えっ……」
そして、そこで戦っているものを見た時に弘幸は一瞬自分の頭がおかしくなったのかと思った。
そこでは黒猫と高さ30cm程の人形2体が所狭しと戦っていたのだ。
悪魔憑きになるのは決して人だけではないというのは聞いていた。
そして、人形を生み出して操るウォーコイトという種類の悪魔憑きがいるのも聞いていた。
だが、実際に目の当たりにしてみて、そのショックは思っていたより大きかった。
ほんの数秒ほど呆然としていたが、それでも何とか気を取り直し、誰が味方かを見極めようとしたそのタイミングで
セラフィムの応援か」
と黒猫。
「邪魔しないで欲しいのだわ」
と赤い服に金髪の人形。
「大人しくしてれば優しく殺してあげるのよ」
と黒と紫の服に銀髪の人形。
それぞれが弘幸に気付いた。
これで黒猫が味方と分かり、悪魔化(デモニックフォーム)して加勢することに。
悪魔憑きは悪魔化することによって、より強い力を発揮することができるのだ。
黒猫は雷を操るカラドボルグのマイトで、事情を聞くと人形側が黒猫の飼い主の老人をさらったとのこと。
見ると黒猫は飼い主を守っている為、防戦一方となっていた。
「任せてください」
そこで弘幸が老人の守りを引き受けることにした。
さらにセラフィムからの応援の女性が駆けつけると一気に戦況は有利になった。
一度人形を全滅させると、敵はもう一度人形を生み出しそれにより敵ウォーコイトの場所が判明。
敵の増援として火を操るクレイモアのヴィシャスが来たものの、状況をひっくり返すほどではなく、まとめて弘幸達に倒された。
とはいえ、楽勝とは決して言えず、弘幸達もボロボロで立っているのがやっとだった。


だが、真の敵とも言えるものは味方だった。
突如黒猫が老人に襲い掛かったのだ!
咄嗟にそばにいた弘幸が老人をかばい、黒猫の爪は弘幸の喉笛を装甲ごと切り裂く。
血が噴出し膝をつく弘幸。
『衝動』
この現象はそう呼ばれている。
悪魔憑きの力を振るい続けると、被寄生者の理性を悪魔寄生体の本能が打ち破り、瞬間「本能の赴くまま」行動するのだ。
その衝動に従ってしまい黒猫は飼い主に襲い掛かったのだ。
喉を押さえつつも弘幸は脅威の回復力を誇る悪魔憑きでも致命傷であることと、自分の中の悪魔寄生体が物凄い勢いで活性化していくのを同時に感じた。
そして、その場にいた者達は見た。
みるみるうちに弘幸の傷がふさがり、その身に纏った悪魔化による装甲はより大きく、より凶悪な姿に変化していくのを。
「ぐ、がはぁ……っ」
そして当の本人である弘幸は、襲い来る衝動の中にありながらも何とか意識を保っていた。
マイトは衝動を抑えきれなくなった時、または生命の危機に瀕した時に一時的だが普段よりも強い力を発揮する。
それはヴィシャスと同等にまで悪魔寄生体を活性化されており、『暴走』と呼ばれる現象だった。そして、その名から受ける印象の通り危険な諸刃の剣でもあった。
衝動のまま強力な力を振るう事により、抑制された衝動からは解放されるがそれは一時的でしかなく、体も精神もヴィシャスに近づいているのだ。
そして、もう一つ困った事に暴走後はエネルギー切れにより気絶してしまうのだ。
つまり、現状での暴走は致命傷による気絶を先延ばしにしたに過ぎない。
さらにこちらへ向かって来てると予想される、消防車か救急車のサイレンまで聞こえ始めていた。
それらの世話になり父親へ心配を掛けたくなかった弘幸は、少し迷った挙句一人でその場から飛行して離脱することにした。
「すみません、後をよろしくお願いします」
仲間の女性へそう告げると、途切れそうになる意識を奮い立たせ窓から飛び立つ弘幸。
そして、ボロボロな姿で空を駆けながら何とか学校の屋上にたどり着いたところで気絶した……。


一時間後に気絶から回復してセラフィムに連絡を取った弘幸が聞いたのは仲間の女性と黒猫の飼い主が行方不明になったという報告だった……。

というわけで、ようやく続きっす。
初セッションで初暴走、衝動表の恐ろしさも味わったっす。
そして、佐久間君はこのせいで猫嫌いへの道を進むっす。
まどか「猫さんかわいいのに」